Rainbow photonics社 TeraSys® – ULTRA

製品カテゴリ
超広帯域THz分光およびイメージング

TeraSys® ULTRAは、リアルタイムでのTHzイメージング及び分光を行う装置です。THz周波数帯域におけるセンシング・検出・分析・データ処理をリアルタイムで行うコンパクトシステムです。有機結晶の技術に基づき、従来の光伝導アンテナでは得られなかった最大20THzの周波数領域の分光を可能にしました。

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TeraSys® - ULTRA
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Rainbow photonics社 高出力エルビウムファイバーレーザー
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TeraSys® アプリケーションノート
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Rainbow photonics社 有機結晶を使用しての文献
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主な特長
  • 周波数範囲:0.3THz~20THz
  • スペクトル分解能:2.7 GHz
  • リアルタイムでのデータ取得(波形取得レート:4波形/秒)
  • 温度センサー付きパージチャンパー
  • 専用ソフトウェアとコンピュータ制御
  • メンテナンスフリー
  • コンパクト設計

TeraSys® ULTRAで測定された周波数領域スペクトル。
透過と反射の両モードでのテラヘルツ発生器及び検出器として有機結晶のDSTMSを使用しています。

透過
反射
仕様
スペクトル範囲 0.3 – 20THz
データ取得速度 4波形/秒
スキャニング範囲 > 300ps
ダイナミックレンジ > 70 dB (@ 4THz)
スペクトル分解能 2.7 GHz
寸法 55cm × 60cm × 30cm
励起光源(高出力&超高速ファイバーレーザー)
パルス幅 < 20 fs
全平均出力 > 200 mW
ピークパワー > 240 kW
中心波長 1565 nm
繰り返し周波数 40 MHz
アプリケーションノート(参考資料)
広帯域THz波発生・検出 / 広い周波数可変域・狭線幅THz光源 / テラヘルツ波の応用例

 

物質とテラヘルツ波との間にある固有な相互作用が理解されるとともに、テラヘルツ電磁放射に対する関心が寄せられ、今後 様々な応用分野においてテラヘルツ波が利用されようとしています。テラヘルツ波は 材料における分子振動や格子振動(フォノン)を励起するので、分光や材料識別に役立つという意味で 研究機関で注目されています。テラヘルツ波は非電離であり、水や水和状態に敏感で 非導電性ポリマー、紙、梱包材料などのような非極性物質に対して透過性をもちます。そのため、他の技術では観測することのできない材料の凹凸や欠陥、物質に内包された物をテラヘルツ波で可視化することができ、材料の非破壊検査に役立つ大きな可能性を秘めています。

テラヘルツ波を発生する手法はいくつか存在しますが、Rainbow Photonics社は 最適化された特性をもち、かつ テラヘルツ波の発生および検出を効率的に行うのに理想的な材料である、有機結晶を用いた新しいテラヘルツ発生器を生み出しています。これらの材料に基づき、テラヘルツ時間領域分光法を利用したコンパクトなTeraSys®やTeraKit®、テラヘルツ画像診断装置であるTeraIMAGE®といった装置の他、独自の可変域をもつ単一周波数のテラヘルツ光源であるTeraTune®を開発しました。このTeraTune®は、1~20 THzの非常に広範な周波数可変域をもち さらには100 GHz未満の狭線幅を実現しています。

テラヘルツ波

 

電磁波スペクトルの中のテラヘルツ領域は、高周波エレクトロニクス(マイクロ波)と(低周波である)長波長の光(赤外線)の中間帯にあります。テラヘルツ波は 黒体放射によって簡単に放射されますが、自然バックグラウンド(我々が日常生活で受けている自然由来の放射線)から信号を分離させるのは容易ではありません。この いわゆる「テラヘルツギャップ」と言われる未開拓周波数帯の前後の領域においては、いくつかの技術を用いて電磁波を発生させることはできています。図1は、この領域における電磁波の大まかな出力レベルを示しています。電子技術を使って最大約0.5 THzまでの周波数でテラヘルツ波を発生させることが出来ますが、これは主に低周波源の電子デバイス発振器による発振周波数の多重化によって可能となっています。0.3 THzから 3 THzの周波数領域では、Austonスイッチ(電磁波を発生させる素子)が有名なテラヘルツ光源です。非線形光学技術(光整流および差周波発生)を利用して、0.3 THz から50 THzの周波数領域、さらには およそ20 THzから 100 THzの周波数領域での量子カスケード(多段接続)半導体レーザーに対応することができます。

図1: 差周波発生技術を使用したときのテラヘルツ波領域と その周辺における電磁波放射の周波数(波長)の関数としてのおおよその出力パワー(連続波出力あるいはピーク出力)斗内政吉「テラヘルツ技術の現状と展望」『ネイチャーフォトニクス』1月号、2007年 97頁より抜粋・更新

広帯域テラヘルツ光源

 

広帯域テラヘルツ光源のほとんどは、フェムト秒領域での超短パルスレーザーによるさまざまな材料の励起に基づきます。広帯域テラヘルツ波パルスを発生させるのに最も一般的な手法はいくつかありますが、なかでも光伝導と光整流は最も一般的に使われています。様々な光学的手法を利用して、広帯域テラヘルツ光の発生が可能です。レーザー技術の飛躍的な向上によって、これらの光学的手法は、ここ20年間で最も大きな進歩を遂げています。

「光伝導」によるアプローチでは、電界によって加速される光キャリア(電子と正孔)によって光伝導スイッチや半導体にフェムト秒レーザーを照射することで超高速な光電流を発生させます。達成可能な帯域幅は、半導体中のキャリア寿命による本質的な制限によって 数テラヘルツ領域内に限られます。

パルスのテラヘルツ放射を発生させるのに有効な別のアプローチとして、「光整流」が挙げられます。フェムト秒レーザーが光伝導方式と同様に用いられ、テラヘルツ波のエネルギーを励起レーザーパルスから直接に得ることができます。この場合 変換効率は励起レーザーのパラメータに依存する以外に、主に電気光学係数と 材料の位相整合条件の最適化に依存しています。光整流では、電圧を印加しない状態で高強度超短レーザーパルスが テラヘルツ波パルスを発生させる透明な結晶材料を通過します。図2は、有機結晶テラヘルツ発生器のDASTとDSTMSを用いて行われたフェムト秒ポンプパルスの光整流の構造図です。この非線形光学効果の過程では、非線形光学材料は 光の強度が高くなると 即座に電気的に偏光状態におかれます。この電気的な偏光状態の変化を利用することで、テラヘルツ波を発生させています。これを整流と呼びますが、それはレーザーパルスの急速な電場の振動が「整流」され 振動の包絡線(パルスの外形)だけが残存するからです。非線形光学媒体の吸収率は低いので 偏光はパルスの包絡線が入射すると即座に起こりますが、これは偏光スイッチング動作の速度には ほとんど限界がないということを示唆しています。すなわち、光伝導性アンテナに見られるようなテラヘルツ帯域幅の限界が 光整流には全くないということです。

光整流の過程によって発生するテラヘルツ波の周波数帯域幅は、ポンプ光線幅や 発生器や検出器用の材料における速度整合条件によって制限されます。広範囲のパルス幅のポンプレーザーを励起光源とするテラヘルツ波の周波数帯域幅を、図3に示します。

図2: 有機非線形光学結晶DASTまたはDSTMSによるテラヘルツ波発生・検出の実験系テラヘルツ波発生は、フェムト秒パルスを用いた光整流の原理に基づき、テラヘルツ波検出は電気光学効果によって誘起されるテラヘルツ波検出器内の屈折率の変化を検出します。この変化は、テラヘルツ波の電場によって誘起され、光学的プローブビームによって検出されます。無機半導体材料の場合には、電気光学的なサンプリング手法が比較的多く採用されていますが1 この有機非線形結晶を使った実験では、テラヘルツ波を誘発する光学レンズが使われています。2
図3: テラヘルツ波発生材料が完全に位相整合条件を満たした場合の、フェムト秒レーザーのパルス幅(半値全幅:25フェムト秒 ~ 100フェムト秒)と テラヘルツ波周波数領域 

テラヘルツ波発生材料

 

有機非線形光学材料は、無機材料に比べて テラヘルツ波とポンプ波の間に より大きな非線形感受率と速度整合性をもつので、テラヘルツ波発生用有機材料を用いることで 材料のレーザー損傷閾値による制限を受けながらも、より大きな出力レベルを得ることが出来ます。表1は、無機結晶や電気光学的なポリマーのLAPCと比較させた有機結晶のテラヘルツ波発生に最も関連する材料パラメータをまとめた結果を示しています。この表に見られるように、有機結晶であるDAST・DSTMS・OH1は テラヘルツ周波数領域の性能である最も高いメリット値(FMTHz)を示しています。テラヘルツ波の屈折率nTHzが平均的な励起光波長での群指数ngの値と近似したときに、位相整合が可能になります。この種の位相整合は、通常 群速度整合と呼ばれており、フェムト秒ポンプレーザーを励起光源とした光整流による広帯域のテラヘルツ波を発生させるのに 一般的に用いられています3

表1:光周波数からテラヘルツ波周波数への変換を調査した 有機・無機非線形光学材料の関連パラメータ。

LAPC(レナンピシリン):ホスト‐ゲスト相互作用を用いた自己修復ポリマーX. M. Zhengほか編『ナノ電子と光電子2』2007年 58頁より抜粋

無機結晶:GaAs / ZnTe / InP / GaP / ZnS / CdTe / LiNbO3

LiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような 最も優れた電気光学材料である無機結晶は、位相整合条件を満たすには程遠く、特殊な構成でのみ用いられます。それゆえに、無機結晶では電気光学係数とメリット値は小さいものの 「位相整合条件」に近いZnTeのような材料が最も一般的に利用されている電気光学・半導体材料です。有機結晶は、高いメリット値と速度整合の可能性の両方を兼ね備えているので 当社の製品に採用しました。有機結晶であるDAST・DSTMS・OH1は、1200nm ~ 1600nmのテレコム波長範囲のフェムト秒レーザー励起光源において 位相整合条件を満たします。そのため、コンパクトな卓上型テラヘルツ分光装置が期待できます。また、有機結晶は広帯域なテラヘルツ周波数領域において「速度整合条件」に近いため、比較的低出力のフェムト秒レーザー光源を用いて広帯域のテラヘルツ波を発生させることが出来ます。TeraKit®を使って有機結晶DSTMSにおいて発生した広帯域のテラヘルツ波(の発生強度)と、コンパクトなフェムト秒ファイバーレーザーを励起光源とした半導体アンテナで発生したテラヘルツ波(の発生強度)を比較した例を、図4に示します。

図4:有機結晶DSTMSを使用したテラヘルツ波パルスの周波数の関数として示したテラヘルツ波の振幅(フェムト秒ポンプレーザーとテラヘルツ時間領域分光を用いてTeraKit®装置で測定)および光伝導アンテナにより発生した一般的なテラヘルツ領域

有機材料を用いたテラヘルツ発生器と検出器

 

テラヘルツ波発生器と検出器は、スイスのRainbow Photonics社で開発・製造されました。Rainbow Photonics社は、有機単結晶を使用したテラヘルツ波発生器の世界で唯一の製造会社です。

図5:光学的に処理され、マウントされたテラヘルツ発生器・検出器—標準的な開口寸法は 2mm ~ 5mmですが、ご要望によってそれ以上の大きさの開口寸法も対応いたします。150フェムト秒領域のパルス幅と1500nmの波長において、150GW/cm2という高い損傷閾値を有しています。さらには当社の発生器を用いて、MV/cm以上の高いテラヘルツ電場発生を実現しています4,5

図6は、当社のテラヘルツ発生器の最も適した使用範囲を示しています。1200~1600nmの波長範囲の励起レーザーが最適です。図3に見られるように、光整流作用を利用するとパルス幅が短ければ短いほど発生するテラヘルツ帯域幅は大きくなります。当社の有機結晶DAST・DSTMS・OH1を用いたテラヘルツ波の発生に関する参考文献リストは、以下をご覧ください。

http://www.rainbowphotonics.com/pdf/Publications_THz_generators.pdf

図6: テラヘルツ波を発生させる有機単結晶DAST・OH1・DSTMSの使用範囲—網掛け部分は、0.5mmを超えるコヒーレンス長をもつときの範囲を表しています。対応波長が1200nm~1600nmのパルスレーザーは、当社のテラヘルツ発生器用の励起レーザーとして最適です。

検出 : テラヘルツ時間領域分光では、有機結晶で発生したテラヘルツ信号を検出するのに一般的な技術が用いられています。広帯域のテラヘルツ領域で 最大検出効率を達成するには、標準的な電気光学サンプリング法で利用されるように 異なった原理を利用した電気光学的検出方法を用いるため同じ有機材料が使われます1。この電気光学サンプリングは光学的に等方性のある材料に限られます。有機結晶には(または他の複屈折材料には)、電気光学サンプリング法と同等の感度で テラヘルツ波誘起レンズ法を用いることが可能です2

TeraKit®とTeraIMAGE®を使ったテラヘルツ時間領域分光とテラヘルツイメージング(テラヘルツ波を用いて、研究対象物の情報を測定・画像化)

 

TeraKit®は、実験室用途のテラヘルツ分光に対応できる柔軟なシステムです。有機結晶の技術に基づき、従来の光伝導アンテナ技術では得られなかったテラヘルツ周波数領域の分光が可能です。遅延ライン・テラヘルツ発生器・テラヘルツ検出器・光学部品・電子部品・専用ソフトウェア・ノート型 パソコンで構成されており、テラヘルツ波の発生および検出に必要な全ての光学部品・機械部品・電子部品を搭載しています。テレコムの波長範囲で発振可能なフェムト秒レーザー光源と組み合わせることができます。

図7:TeraKit®の光学板(寸法:38cm X 38cm)
図8:TeraIMAGE®の光学板(スキャニング範囲:50mm X 50mm)

TeraKit®におけるテラヘルツ波の検出は、特殊な光学部品や電子部品を使って最適化され、比較的 低出力のフェムト秒ファイバーレーザーを用いて高いSN比が得られています。時間領域で検出されたテラヘルツ信号とそのスペクトルの例を、図9に示します。

図9:TeraKit®で測定したテラヘルツ時間領域での信号振幅および振幅スペクトル—厚さ0.45mmのDSTMS結晶を テラヘルツ波発生・検出に使用 励起レーザーは、パルス幅 65フェムト秒、平均出力 180mW、パルスエネルギー 1.8ナノジュール

TeraIMAGE®は、テラヘルツ時間領域分光装置に テラヘルツイメージング機能を追加した製品で、TeraKit®と同様の分光関連部品のほか 測定対象の画像を取り込むために必要な全ての機械制御機器・データ取得用のソフトウェアなどのイメージング部品が装備されています。スキャニング範囲は、最大50mm X 50mmで これより大きなサイズも要望に応じて対応可能です。TeraIMAGE®を用いたテラヘルツイメージングの例を、図10で示します。

図10:プラスチック片の光学画像(一般的な写真で撮影、写真上)とTeraIMAGE®によるテラヘルツイメージング画像(写真下)。光学的には不可視のプラスチック片の欠損をテラヘルツイメージングではっきりと観察できるのがわかる。

広い周波数可変域&狭線幅テラヘルツ光源「TeraTune®」

 

材料の多くは、光吸収特性(スペクトルの指紋)をもちます。この特性は 光伝導アンテナによって明らかになった 約3THzまでのテラヘルツ領域だけでなく、それ以上の領域でも得られます(表2参照)。さらには、大気中の水蒸気がテラヘルツ波を吸収することにより 光減衰が生じます。水蒸気によるテラヘルツ波の吸収によって、テラヘルツ波の利用可能範囲が約10THz未満において制限されます。しかしながら この吸収による光の減衰は、10THz以上の領域ではかなり小さくなります。(図11参照)例えば、18THzにおいては4桁も小さくなります。測定範囲が10THzのテラヘルツ領域から、20THzの領域へと拡張されるのは興味深いです。

表2:爆発物や関連物質がもつ テラヘルツ指紋スペクトル(Z. Liuらによる米国 電子工学・電子工学技術学会(IEEE)発行の機関誌から 抜粋6)
図11:空気によるテラヘルツ波の減衰(2007年 米国 電気電子技術者協会刊行のRoger Applebyらによる報告書より抜粋)10THz以上では、空気による減衰は10THz以下より劇的に減ります。このことによって、リモートセンシングやリモートイメージングなどの新しい応用が期待されます。

テラヘルツ分光の応用として、広帯域のパルスより 狭帯域で高出力のパルスが適する場合があります。テラヘルツ波の出力が広帯域発生技術で発生すると、パルスの出力が全スペクトルに分散し 特定の周波数でのテラヘルツ波の出力密度は小さくなります。ある特定のテラヘルツ波周波数において、十分な変換効率が得られるために 狭帯域で高出力のパルスが望まれます。

TeraTune®は、100GHz未満の狭線幅と 1THz ~ 20THzの広い周波数可変域をもつ 広帯域周波数可変・狭線幅テラヘルツ光源です。Rainbow Photonics社は、この独自のテラヘルツ光源を2012年に市場に紹介しました。テラヘルツ波発生の材料となる有機結晶のDSTMSやOH1を使用し、ナノ秒パルスの差周波発生に基づいています。特別設計された2波長発生のOPO発振器(光パラメトリック発振器)によって、適切な赤外の2つの励起パルスが発生します。このOPO発振器は、1330nm ~ 1480nmの波長可変範囲をもち、テラヘルツ領域における周波数の違いをもった2波長の狭線幅のナノ秒パルスを発生させます。OPO結晶を傾ける(角度チューニング)ことで、付属のソフトウェアで監視・制御しながら波長のチューニングを可能にします。テラヘルツ発生器のベースとなる結晶は、様々なテラヘルツ周波数で最大効率を達成させるのに外部から結晶を交換できます。有機結晶OH1を用いることで、1.25THzにおいて30W以上の高強度テラヘルツ波を発生させることができます。厚さ1mmのDSTMS結晶を使って測定された可変スペクトルを、図13に示します。

図12:TeraTune®チューニング範囲(1~20THz)狭線幅(< 100GHz)のテラヘルツ光源
図13:TeraTune®のチューニングカーブ(1mm厚のDSTMSを使用)領域によってテラヘルツ波のピーク出力が小さいのは、発生材料でテラヘルツ波が吸収されたか もしくは位相整合が不十分であることが原因。結晶は厚い(1mm)ために、位相整合を満たしたところは出力が高い。

テラヘルツ波の応用

 

テラヘルツ波の応用の中には、残留放射線領域における分子振動と格子振動を励起させるというテラヘルツ波の固有の特徴と関連づけられるものがあります。それに加えて、テラヘルツ波はほとんど電気を通さない均質材料のプラスチック・紙・マンガ本・ほとんどの衣服などで吸収が少なく透過するので 隠された危険物質を検知することができます。それゆえ、材料を把握するテラヘルツ分光測定だけでなく、セキュリティ応用での活用や絶縁材料の欠陥の識別などに利用できる可能性をもっています。導電材料や部分的に導電性を有する材料にとって、テラヘルツ分光はこれらの材料における電荷輸送の仕組みを深く理解するのに役立ちます。ここで、テラヘルツ波を発生・検出するために 有機非線形光学材料を用いて実証されたテラヘルツ波スペクトルおよび材料検査の例をいくつか挙げておきます。

図14(a)は、テラヘルツ時間領域分光法によって測定された 数種類の爆発物のテラヘルツ波を示しています。図14(b)は、テフロン板2枚の間に隠されている爆発物のセムテックスのサンプルを 光波(左側)とテラヘルツ波(右側)で観察した様子を示しています。テラヘルツ波では、セムテックスが緑色ではっきりと識別できます。左側の画像にある右上の赤い紙のシールは、右の画像では 透過されて黄色になっています。図14(c)は、封筒に隠されたセレウス菌胞子(炭疽菌)の写真とテラヘルツ波によるイメージを示しています。図14(d)と(e)では、材料検査の例を示しています。図14(d)は、まず 複数枚のOHPシートを 光波とテラヘルツ波でそれぞれ観察したものを示しています。その中の1枚に、ETHと書かれたラベルを切り抜いたものを挟んでおきました。可視光では確認できなかったのに対して、テラヘルツ波では 全く対照的にはっきりと確認できます。これは、切り抜かれた領域(欠陥)における テラヘルツ波の位相シフトによるものです。

2つ目の写真は、プラスチックに埋め込まれた金属欠陥または金属介在物(→ NLOという文字を形作った金属ワイヤ)を テラヘルツ波でどのように可視化することができるか示したものですそして3つ目の写真は、プラスチック片の内部にある「ボイド」(プラスチック内部に発生した空隙)の識別を示しています。図14(e)は、封筒内に隠されたクレジットカードに書かれているカード番号を認識したものです。そして最後に 図14(f)は、欠陥が有るポリエチレンと無いポリエチレンの テラヘルツ波の反射によるイメージの違いを示しています。10μm未満の分解能をもつ3D画像で、ボイドを可視化することができます。テラヘルツ波の波長より 分解能が10μm未満と小さいのは、テラヘルツ反射波の位相シフトや時間分解能を正確に決定することができるということが理由になっています。

図14:有機非線形光学材料を使用したテラヘルツ発生および検出によって実証された応用例
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